外山周です。
「もののけ姫」の英語吹き替えの台詞と、そこから分かる日本文化についての記事をシリーズで書いています。
今日はお待ちかねのカヤちゃんです!
カヤ / Kaya
Wikipediaによれば、カヤちゃんはアシタカの許嫁だそうです。
アシタカを「兄様」と呼ぶが、実の兄妹というわけではなく、エミシ村のように小さな村では、自分より年上の人間達は皆「兄様(あにさま)」や「姉様(あねさま)」と呼称する。将来はアシタカの嫁になるつもりであり、そのように周りが認めた娘だった。(Wikipediaより)
この設定が分からなくても、カヤとアシタカが実の兄妹ではないこと、カヤはアシタカを好きであることが、日本語の台詞からならば伝わってくると思います。
1.台詞「私の代わりにお供させてください」
では、アシタカの旅立ちの時の2人の会話を見ていきましょう。
日本語
① カヤ。見送りは禁じられているのに。(アシタカ)
② おしおきは受けます。どうかこれを、私の代わりにお供させてください。(カヤ)
③ 大切な玉の小刀じゃないか。(アシタカ)
④ お守りするよう息を吹き込めました。いつもいつも、カヤは兄さまを思っています。きっと…きっと…!(カヤ)
⑤ 私もだ。いつもカヤを思おう。(アシタカ)
英語
① Kaya. What are you doing here? You know it’s forbidden.
② Do you think I care about that? I came to give you this so you won’t forget your little sister.
③ Your crystal dagger… Kaya, I can’t take this.
④ Please keep it with you, brother, to protect you. You must take it with you, please. I want you to have it so you won’t forget.
⑤ Kaya, you know I could never forget you.
英語の台詞の和訳
① カヤ、ここで何をしているんだ。見送りが禁じられていると知ってるだろう。
② そんなこと私が気にすると思う?これを渡しにきたの。あなたが妹を忘れないように。
③ お前のクリスタルダガーじゃないか。カヤ、受け取れないよ。
④ お願い、一緒に持っていってお兄ちゃん、お兄ちゃんを守るために。絶対持って行ってくれなくちゃだめ。お願い。これを持っててほしいの。忘れないように。
⑤ カヤ、君を忘れることなんて絶対ないよ。
2.今回の日本文化:「息を吹き込めました」
今回のカヤちゃんの日本語の台詞は、日本的な「想い」がのっています。
英語のように「忘れないで」とは一言も言っていませんが、できればアシタカと一緒に行きたい、アシタカに自分を忘れないで欲しいという思いが伝わってきます。
感想
この英訳じゃ、アシタカとカヤが本当の兄妹みたいだなぁ…というのが率直な感想でした。
お仕置きは受けます →そんな事気にすると思う?
これを私の代わりにお供させてください →忘れないように持って行って欲しい。
お守りするよう息を吹き込めました →守るために持っていけ。
うーん直接的。
まるでアシタカが敵と戦って、やられそうになったところで小刀を使い、それで敵をやっつけて命が助かった!みたいな、そんな物理的なものを感じます。
日本語には「念」がこもるのですよ~。
英語にこもらないとは言わないが、日本語にこもる念はその比じゃないのです。