日本語が美しいと感じるには「アンテナ」があるらしい。実はこの「アンテナ」の正体、興味深い実験によって明らかにされています。
言語を聞いた時は、左脳(言語脳)がはたらく
人間の脳には、左脳と右脳があります。
それぞれ異なる機能をもっていて、
・左脳:言語、論理
・右脳:イメージ、直感、五感
を司っています。
つまり、言語ベースで情報を処理するには左脳が、音楽などを聞いて感動するときは右脳が、それぞれ働いているわけです。
これは人種、母国語に関わらず、全ての人間に共通です。
コオロギの鳴き声を聞いた時の脳反応
コオロギの鳴き声を例にとります。
コオロギの鳴き声は、当然人間の言語ではありません。
そのため脳で雑音として処理され、右脳が優位に働くと予想ができます。
しかし、ある実験によれば、日本人の脳だけが違う脳反応を示すそうです。
コオロギの鳴き声を聞かせると、
・西洋人の脳は右脳優位に働く
・日本人の脳だけは左脳(言語脳)が優位に働く
という、顕著な違いが見られるのだそうです。
つまり、西洋人はコオロギの鳴き声を「雑音」として処理しています。
西洋人だけでなく、韓国、中国、インドの言語を母国語とする人たちも、みな一様に西洋型の反応を示します。
一方で日本人だけが、コオロギの声と人間の言語が同等であるかのうように、まるで意味のあるメッセージのように受け取っているのです。
まとめ
・西洋型の反応:コオロギの鳴き声を雑音として処理する
・日本型の反応:コオロギの鳴き声を言語脳で処理し、メッセージ性を見いだす
日本人だけがコオロギの声を言語脳で処理する理由
なぜこのように、虫の鳴き声に対する脳反応が分かれてしまうのでしょうか。
この理由については、下記のような人の脳反応がヒントをくれます。
①日本人の両親を持ち、アメリカで育った日系2世
②韓国人の両親を持ち、日本で育った在日2世
このように両親と異なる国で育ち、違う言語を母国語とした人達に対して、コオロギの鳴き声を聞かせるとどうなるでしょうか。
・・・。
この場合の脳反応は、こうなります。
①日系2世 → 西洋型
②在日2世 → 日本型
つまり、子供の頃の「母国語」の習得が、脳の形成に影響を与えると推論されます。
いくら両親が日本人でも、アメリカで育ち、英語を母国語として育つと、コオロギの鳴き声は雑音です。
反対に外国人の両親をもっていても、日本で育ち、日本語が母国語であれば、コオロギの鳴き声を聞いた時にメッセージ性を見いだすようになるということです。
「アンテナ」の正体は、この脳反応!
この実験からも分かるように、日本語を母国語とする人は、右脳が働くべき時に左脳(言語脳)が働いていると言えます。
雑音を聞いてメッセージ性を見いだす脳反応。
これが備わっていると、言語を聞いた時にはより一層メッセージ性を見いだすことができるのだと思います。
1つの単語、1つの文章に、言語以上の想いをのせる。
そしてそれをキャッチすることができるのは、この独特の脳反応があるためです。
…昨日、私の彼は言いました。
「日本語を美しいと感じるアンテナは、生まれつきだ」
「だからない人にアンテナを作るのは無理だ」
と。
ですがアンテナの正体は、この日本人独特の脳反応です。
だから生まれつきじゃなく、後天的に培ったものと言えるわけです。
日本語を母国語として育ったことによって、この脳反応になったのですから。
・・・つづく。
参考文献
・日本人の脳 角田忠信著
・日本語は神である 昌原容成著