「もののけ姫」より:英語の吹き替えから思う日本文化①

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外山周です。

ジブリの「もののけ姫」が大好きです。

壮大で、自然豊かで、芯の強い魅力豊かなキャラがいて、日本独自の神様に対する感覚がよく描かれていると思います。

でもこの作品を英語の吹き替えで見ると、壮大さが半減しているように感じるばかりか、所々コントのように感じて笑いたくなってしまうことがあります。

日本の文化と神様に対する感覚がどんなものなのか、また英語圏とはどう違うのか。

あえて英語の吹き替えの台詞から、この違いの謎に迫ってみたいと思います!

 

じいじ / Ji-san

記念すべき1回目はアシタカ・・・ではなく、最初にアシタカと共に出てくる「じいじ」の台詞を見ていきたいと思います。

おそらく村の重鎮の1人であるおじいちゃんで、アシタカに「タタリ神に手を出すな!」とアドバイスをします。

ちなみに英語吹き替えでの呼び名は「Ji-san」です。

理由を考えてみたのですが、正直サッパリ分かりません(笑)。

推測するとすれば、多分「old man」では失礼だし、かと言って血の繋がってない相手に「grandpa」も変だし、それでファーストネームっぽくしたのかも…。

日本の古い村では、血がつながってなくても自分より年上の人はみんな「兄様」「姉様」または「じぃじ」だったのでしょう。

 

1.台詞「タタリ神に手を出すな!」

それではさっそくじぃじ / Ji-sanの台詞を見ていきましょう!

日本語

タタリ神だ!

アシタカ!タタリ神に手を出すな!呪いをもらうぞ!

英語の台詞

It’s some kind of demon! (ありゃ一種の悪魔だ!)

Prince Ashitaka! Wait! Be careful! That thing is cursed! Don’t let it touch you! (アシタカ王子!待って!気をつけて!あれは呪われています!あいつに触られないように!)

 

2.今回の日本文化:タタリ神=demon

今回の台詞のポイントは、何と言ってもタタリ神がdemonと訳されたところにあります。

・some kind of demon

・that thing

・it

と呼ばれています。

英語の「that thing」は、ニュアンスで言うと「あいつ」にさらに嫌悪感を少し足した感じの言葉です。

日本語では仮にも「神」と名がついているのに、英語では that thing 呼ばわりなのです。

 

①日本の神は自然そのもの

もののけ姫を見た時に、「なんで猪が神様なの?」「神さまなのに死ぬの?」と疑問に思いませんでしたか?

日本古来の考え方では、神様はほとんど人間と同じです。

古事記に出てくる神様も多くが寿命があって、殺されたり泣いたり恨んだりしてとても人間くさいです(笑)。

加えて自然そのものを神とし、特に巨岩や山そのもの、大きな獣などを「神さま」とする自然崇拝の概念があります。

そういった背景から、もののけ姫の動物の神様たちが描かれています。

 

②自然も人間も荒ぶる

日本古来の神様は人間くさいものであり、また自然そのものを神とする自然崇拝があるということは、日本の考え方では本来「神さまも荒ぶる」であると言えます。

人間と同様、苦しめば人を恨んだり怒ったりします。

そのまま死んでいけば「祟り」になります。

古来から「祟られる」という概念がある通り、日本では神様も怒って祟るのです。

どんなに怒った荒ぶる神様でも神様は神様。

だからこそ人間は、丁重にお祀りするのですね。

逆に大切にお祀りして神様が荒ぶらなければ、自然の恩寵をもたらしてくれるものとも考えられています。

 

③「手を出す」という日本語

日本語の「手を出すな!」という台詞は、英語では「Don’t let it touch you!」になっています。

英語では「それ(タタリ神)に触られるなよ!」ですから、つまり「それに対して触らせるようなことはするなよ!」とハッキリ行動を止めようとしています。

対して日本語の「手を出す」には主語がなくて、誰が誰に手を出すのか、誰から誰に呪いがわたるのかが非常にぼんやーりしています。

そもそも「手を出すな」の一言に、「殺そうとするな」「矢を射るな」「干渉するな」「進路を妨げようとするな」などなど、あらゆる具体的な方法が含まれているわけです。

思えば親が子供に干渉することも「手を出す」と言います。

 

まとめ

・日本の古い村では、血がつながってなくても「じぃじ」と呼んでいた?

・タタリ神は神様、demonは悪魔

・日本の神様は自然そのもの

・日本の神様は祟るけど、丁重にお祀りすれば恵みをもたらしてくれる

・「手を出す」という日本語は干渉すること

 

感想

以前アメリカ人のネイティブと一緒にもののけ姫を見た時は、意味が全く分からなかったようでした(笑)。

アメリカの神様はキリスト教です。

日本の多神教と違ってアメリカは一神教であり、元々動物を神様とする概念もなければ、demonを祀ることもありません。

確かにこの辺りは、説明がなければ意味不明だろうなと思います。

私は日本人ですが、初めてもののけ姫を見た時はどうして猪が神様なのかが分かりませんでした。

大学で神道や日本神話に興味を持つようになってから、初めて少しずつ意味が分かるようになりました。

にも関わらず、それ以前からもののけ姫に惹かれて何度も見ていたのは、やはり日本人のDNAのなせる業でしょうか(笑)。

 

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外山 周

外山 周

TOYAMA, Chika
長く英語業界に身を置き、10,000時間以上の指導経験とTOEIC400点アップ等の実績を持つ。が、上達のみを重視するやり方に疲れ独立。現在は「ゆるくキツく楽しい」をモットーに、心を重視して英語イベントや個人セッションを行なっている。
口癖は「英語は外国語だから、完璧じゃなくていい」。
将来の夢は心理カウンセラーと、算命学の鑑定資格を取ること、日本人向け「古典に親しむ会」を行うこと。
神道と日本語が大好き。好きな言葉は「国のため、人のため」。

★詳しいプロフィールはこちらからどうぞ!

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長く英語業界に身を置き、10,000時間以上の指導経験とTOEIC400点アップ等の実績を持つ。が、上達のみを重視するやり方に疲れ独立。現在は「ゆるくキツく楽しい」をモットーに、心を重視して英語イベントや個人セッションを行なっている。
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